サーマルカメラと赤外線カメラは夜間の監視に有効といった認識を持っている方も少なくありません。
どちらも暗所での監視に強みがありますが、映像の仕組みや得意なシーンは大きく異なるため、目的によって使い分ける必要があります。
今回は、サーマルカメラと赤外線カメラの仕組みや違い、防犯に強いカメラの選び方について詳しく解説していきますので、最後までご覧になり導入の参考にしてください。
目次
赤外線カメラとサーマルカメラの仕組みと特徴
夜間や暗い場所でも対象を映せる特殊なカメラは、防犯対策においてますます重要です。
なかでも「赤外線カメラ」と「サーマルカメラ」は、どちらも暗所に対応する技術ですが、実はその仕組みも用途も大きく異なっているため、両者を対比しながらその違いを明確にしていきます。
赤外線カメラの仕組みと特徴
赤外線カメラは、赤外線LEDを用いて暗闇でも対象物を撮影できるカメラのことです。
人の目には見えない赤外線(近赤外線)を照射し、その反射を映像として捉える仕組みで、夜間や無照明環境でもモノクロ映像で監視や映像録画が可能となります。
一般的には10〜30メートルほどの照射距離を持っており、夜間でも対象の動きや輪郭が白黒映像で確認できるため住宅や店舗、駐車場など多くの場面で採用されています。
また、赤外線カメラの魅力は、比較的安価なモデルが多く、個人でも気軽に導入しやすいのが特徴です。
映像をそのまま記録できるという点でも、トラブルの証拠を押さえたいというニーズには非常にマッチしています。
ただし、反射光に依存しているため煙や霧、強い光には弱く、対象の温度までは認識できません。
そのため、赤外線カメラは「その場に何かがいた」という記録を残すことには強いですが、「何かがおかしい」という兆候を察知するには不向きといえます。
サーマルカメラの仕組みと特徴
サーマルカメラは、物体そのものが放つ「熱(遠赤外線)」を検出し、温度差を画像や映像として可視化するカメラです。
あらゆる物体は温度を持っており、熱エネルギーを自然に放射しているため、暗闇でもセンサーが熱を捉え、温度分布として色で表現するのがサーマルカメラの仕組みです。
人物・機械・動物など、熱源があるものはすべて画面上に可視化されるため、目視では発見が難しい異常をいち早く把握することが可能です。
ただし、温度を可視化するため、服装・顔つき・車種などの外見情報はほとんどわかりません。
また、高性能なモデルほど高額になり導入には一定の予算が必要になります。
「見る対象の違い」からわかる根本的な差
赤外線カメラとサーマルカメラの違いを一言で表すなら、「見る対象」そのものが異なるという点に尽きます。
- 赤外線カメラ:“光の反射”を見る→人の形や動き、行動を捉え、「誰が・どこにいるか」を記録
- サーマルカメラ:“熱の放射”を見る→人や機械の温度を検知し、「異常がないか・潜んでいないか」を察知
たとえば、夜間に人の姿を捉えたいなら赤外線カメラ。
暗闇やフェンス越しの“存在そのもの”や“異常”を見逃したくないならサーマルカメラ。
このように目的・用途によって、どちらが向いているかをしっかりと考えることが重要です。
どちらがどんな場面に強いか?活用シーンから考える
実際の使用現場を見ていくと、両者が得意とするシーンがはっきりと分かれていることがわかります。
赤外線カメラが強いシーン
「姿・行動・動線」を“映像として残したい”場合に最適
- 夜間の人物監視(建物出入口、駐車場など)
- 不審者の行動記録、証拠映像の保存
- 施設内の動線把握(誰が・どこを通ったか)
- 車両のナンバー、人の服装の識別が必要なシーン
見たものを後から分析したい、防犯映像重視の現場向け
サーマルカメラが強いシーン
「熱反応」から“存在や異常”を検知したい場面に特化
- フェンス外や物陰に潜伏する不審者の早期発見
- 完全な暗闇や濃霧など光が届かない場所での監視
- 設備、機械の異常発熱、火災予兆の監視
- 複数拠点を少ないカメラ台数でカバーしたい場合
目に見えない“異常や潜伏”を察知する、警備や保全の現場向け
導入前には「何を守りたいのか」を明確にし、それに合ったカメラを選ぶことが、最も効果的な防犯対策につながります。
赤外線カメラとサーマルカメラ導入事例を紹介!
ここでは、実際に赤外線カメラやサーマルカメラが導入されている現場の事例を紹介します。
赤外線カメラの事例:夜間の住宅監視
郊外の一戸建て住宅では、夜間に庭や玄関先で物音がすることが増え、防犯意識の高まりから赤外線カメラを設置。
照明がない状態でも、カメラ本体に内蔵された赤外線LEDにより、完全な暗闇でも白黒映像で人や動物の動きが鮮明に記録。
特に、駐車場や勝手口など死角になりやすい箇所の監視に効果があり、実際に不審者が立ち入った際も記録をもとに警察へ通報することができるようになったため「夜でも安心して眠れるようになった」「外出中でもスマホで確認できる安心感がある」と、家庭レベルでの防犯強化ツールとして満足度の高い導入事例となっています。
サーマルカメラの事例:太陽光発電所の防犯
太陽光発電所は山間部や郊外の広大な敷地に設置されることが多く、日中・夜間問わず無人運用が多い環境です。
無人運営の発電所では、送電線ケーブルの盗難が相次いでいるため、フェンス外の侵入や資材盗難・パネル破損の兆候などを遠隔かつ省人力で検知できるサーマルカメラを導入。
赤外線照明なしでもフェンス外の潜伏者や温度異常を“熱”で感知できるため、真っ暗な敷地でも従来の監視では見落とされていた異常に気づけるようになりました。
加えて、パネルやパワコンのホットスポットを遠隔で監視することで、保守点検の効率化にも貢献。
人が常駐できない現場の「目」として、防犯とメンテナンスを同時に担う運用事例となっています。
実録・防犯の現場で見た“誤解された使い方”TOP3
防犯カメラの技術は進化を続けていますが、導入する人の理解が追いついていないケースも少なくありません。
高機能なカメラを入れても、設置や運用を間違えると十分な効果が得られないどころか、「つけているのに防げなかった」という失望につながります。
続いては、実際の防犯現場で見てきた“誤解された使い方”の中から、特に注意すべき3つの失敗例をご紹介します。
赤外線カメラ=「真っ暗でも何でも見える」と思っていた
「赤外線だから夜は全部見えるはず」と期待して導入したが、実際には映像が真っ黒で何も映っていなかった…というのは現場でよくある失敗例です。
赤外線カメラは、赤外線LEDの照射が届く範囲しか映せないため、遠すぎたり、障害物がある場所では反射光が弱く、画面は真っ暗に映ってしまいます。
そのため、防犯効果を発揮するには、正しい設置高さ・距離・角度の計算が不可欠です。
「赤外線=万能」ではなく、照射距離や環境に合わせた機種選びが必要という認識をしておくことが非常に大切です。
サーマルカメラで「顔や服の色までハッキリ見える」と思っていた
サーマルカメラは“熱”を検知するものであり、人物の顔や服装、車のナンバーといった細部までは映りません。
工場に犯罪の証拠映像を撮影する目的でサーマルを導入したものの「映っていたのは“ぼんやりしたシルエット”だけだった」といった事例もあるようです。
サーマルは“誰がいたか”を特定するツールではなく、“何か熱源があったか”を検知するためのものであるため、記録を目的とするなら赤外線や通常のカラーカメラとの併用が必須です。
「1台で全部映したい」と無理なカメラ配置にしてしまった
コストを抑えたい一心で、「この1台で入口も通路も倉庫も全部見てほしい」と依頼されるケースは非常に多いです。
しかし、カメラには視野角と有効照射距離があるため、1台で広範囲を網羅しようとすると、結局どこも中途半端にしか映らないという結果になってしまいます。
特に夜間は、赤外線の届く距離に限界があるため、「映っていても小さすぎて確認できない」事態が頻発します。
カメラは“記録のため”だけではなく、“役に立つ映像を残すため”に設置するものであるため、 適切な設置数と画角の設計が、防犯効果を左右します。
初めての選定でも安心!防犯カメラ選びの判断基準
カメラの選定を失敗しないためには、導入目的や設置環境を明確にすることが重要となります。
ここでは、これから赤外線カメラもしくはサーマルカメラなど防犯カメラの導入を検討する方でも迷わないように、判断のポイントを整理して解説していきます。
目的整理:何を映したいのか?
防犯カメラ選定で最も重要なのは、「何を映したいのか」を具体的にイメージすることです。
たとえば、不審者の顔や服装、動作といった外見的な情報を記録したい場合は赤外線カメラが向いています。
一方、広大な敷地や暗闇のフェンスの向こうに“何かがいる”という存在自体を感知したい場合はサーマルカメラが有効です。
つまり、「誰が・何をしたか」を追いたいなら赤外線カメラ、「何かおかしい」を早期に察知したいならサーマルカメラを選びましょう。
現場環境の把握:屋外か屋内か
防犯カメラを設置する際に屋外か屋内か、または照明があるかどうかによっても選択肢は変わります。
屋外で夜間の監視が必要な場所や屋内の明確な視野が取れるエリアでは、照明との組み合わせで赤外線カメラが高い効果を発揮します。
ただし、 赤外線カメラはLEDの照射距離や反射に影響されるため、霧や粉じん、遠距離監視にはやや不向きなので、屋外の場合は天候や街灯の影響を考慮しましょう。
そして、設置場所が完全な屋外、暗所、霧が出やすいエリアの場合はサーマルカメラの圧倒的な“環境耐性”が力を発揮します。
現場の環境によって「映る」「映らない」が大きく左右されるため、先に“見るべき条件”を整理しておくことがポイントです。
設置可能なスペースと電源環境
カメラの種類やモデルによって、設置に必要なスペースや電源の条件は異なります。
赤外線カメラは、省スペース・省電力で設置しやすいモデルが多く、狭い通路や仮設フェンス、高所のポールなどにも柔軟に対応できます。
また、電源の取れない屋外では、太陽光による自動充電式の赤外線カメラを使うことで、夜間も赤外線LEDが安定して作動し、継続的な録画が可能になります。
さらに通信環境も、LTE通信モデルを選ぶことでインターネット環境がない場所でもリアルタイムで映像確認や通知が受けられるため、工事現場や農地などでも活用されています。
一方、サーマルカメラは高性能な温度感知センサーやAI分析機能を搭載しており安定した電源供給が必要となります。
また、サーマルカメラは常時稼働が前提であるため、赤外線のように“夜間だけLEDを点灯する”ような節電モードが少ないため、バッテリー駆動には不向きで電源供給もPoEモデルが多いため外部電源の確保が必要です。
実際の現場をよく観察し、どちらが向いているのか、また設置後のメンテナンスも含めて運用しやすいかを確認しましょう。
維持・運用面でのコストと効果
赤外線カメラは機器単価も比較的安価なモデルもあり、メンテナンス性にも優れているため、コストを抑えて複数台設置したい現場に向いています。
一方、サーマルカメラはAIが搭載されており、1台で広範囲かつ環境影響を受けずに長期監視できるため、人手が足りない現場や無人運用前提の場所に強みがあります。
運用コストを考慮する場合、「数台の赤外線カメラと1台の高性能サーマル+AI」という視点で効果と費用を比較しましょう。
ただし、カメラの費用だけで判断せず、“どのくらい守れて、どのくらい手間が減るか”なども考慮しましょう。
まとめ
赤外線カメラとサーマルカメラは、それぞれ異なる角度から“見えないものを映す”技術ですが、どのように活用するべきなのか知っておくことが非常に大切です。
赤外線カメラは夜間でも「人物の姿や行動を記録したい」場合に、サーマルカメラは、「真っ暗な中でも熱源の存在を検知したい」「フェンスの外や物陰の不審者を察知したい」現場に最適です。
どちらも設置環境や目的によって効果を発揮する方向性が異なるため、“何を守りたいか”によって選ぶべき機器も変わってきます。
もし、屋外用の赤外線カメラやサーマルカメラの選び方について不安に感じている方、詳しい情報が知りたいという方は、お電話もしくはお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。
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