物流倉庫は多くの商品や資材が保管される重要な施設であり、セキュリティ対策は企業にとって最優先事項なため、AIを搭載した防犯カメラの導入が推奨されています。
今回は、物流倉庫におけるAI搭載の防犯カメラを導入することがおすすめな理由や注意点について詳しく解説しますので、最後までご覧になり、導入や買い替えの参考にしてください。
目次
従来の防犯カメラの限界
物流倉庫での防犯対策として長く利用されてきた従来型の防犯カメラシステムには、いくつかの限界があります。
これらの課題を理解することで、AI搭載カメラがなぜ次世代のセキュリティソリューションとして注目されているのかが明確になります。
従来カメラの限界①:映像は録画されるが「検知」はできない
従来の防犯カメラシステムの最大の欠点は、単に映像を記録するだけで、異常や不審な行動を自動的に検知する機能がないことです。
映像は常に記録されていますが、万が一何か問題が起きてしまった場合、事件やトラブルに気づいた後で初めて録画映像を確認し、対処するという流れとなるため、事件発覚から数時間~数日後の対応となってしまいます。
そのため、被害を未然に防いだり迅速かつ適切な対処が遅れることになります。
特に24時間稼働している物流倉庫では、リアルタイムの異常検知ができないことは大きなセキュリティホールになってしまうことが考えられます。
従来カメラの限界②:警備員への依存が高くコストも増加
従来のカメラシステムでは、モニターに映る映像を常に人の目で監視する必要があります。
このような環境下では以下のような問題を引き起こしてしまいます。
- 人件費の増大:24時間体制で監視するには複数の警備員が必要となり、人件費が膨らみます
- 人的ミスのリスク:長時間のモニター監視は集中力の低下を招き、異常の見落としが発生しやすくなります
- 広範囲の監視困難:大規模な物流施設では、限られた人員で全エリアを効果的に監視することが難しくなります
物流業界では利益率の向上が常に課題となっている中、セキュリティ面での人件費増加は経営を圧迫する要因となります。
特に昨今の人手不足や最低賃金の上昇を考慮すると、人的リソースに頼った監視体制の維持はますます困難になってしまいます。
従来カメラの限界③:死角や暗所の監視に弱い
従来のカメラシステムにおける技術的な限界を考える必要もあります。
- 照明条件への依存:暗所や逆光環境では映像品質が大幅に低下し、識別力が落ちます
- 固定視野の制約:固定カメラの場合、一定の角度しか監視できず、死角が生じやすくなります
- 解像度の限界:従来型カメラでは、遠距離からの人物特定や細部の識別が困難です
物流倉庫特有の環境要因として、高く積まれた棚や大型機材、頻繁に移動する荷物などによって生まれる死角も問題となってきます。
とくに死角によって生まれる視認性の低い場所では、不正行為の絶好の隠れ場所となりやすく、従来のカメラシステムだけで対応するには限界があります。
物流倉庫で発生しやすい防犯上のリスク
物流倉庫が直面している主要なセキュリティリスクを理解することで、AI防犯カメラの必要性がより明確になります。
ここでは、物流現場特有の防犯課題を詳しく見ていきましょう。
物流倉庫のリスク①:不審者の侵入リスク
物流倉庫は、その性質上、高価値な商品や資材が大量に保管されているため、外部からの侵入による窃盗のターゲットになりやすい施設です。
特に注意すべき侵入リスクとして
- 無人時間帯を狙った侵入:夜間や休日など、スタッフが少ない時間帯は特に狙われやすくなります
- 広大な敷地の管理困難:大規模な物流センターでは、敷地全体の見回りが難しく、フェンス越えなどの侵入が見落とされるケースがあります
- 複数の出入口管理:荷物の搬出入のため複数のドアやゲートがあり、出入口の鍵の管理が複雑になりがちです
近年では組織的な窃盗団による計画的な侵入も報告されており、単純な施錠だけでは対応しきれないケースも増えています。
特に高額商品や転売しやすい商品を扱う倉庫の場合では、より高度なセキュリティ対策が求められます。
物流倉庫のリスク②:内部関係者による窃盗やトラブル監視
外部からの脅威だけでなく、内部関係者による不正行為も物流業界で深刻な問題となっています
- 従業員による商品の持ち出し:小型で高価な商品が少量ずつ持ち出される「小さな窃盗」は発見が難しく、長期間にわたって続くことがあります
- 派遣スタッフや短期アルバイトの管理:流動的な人員体制では、全スタッフの行動を把握することが難しくなります
- 作業中の破損隠蔽:商品破損や誤配送などのミスを隠すための不正行為が発生することもあります
統計によると、物流業界における損失の約30%は内部不正によるものといわれています。
これらの不正行為は、単に商品の損失だけでなく、在庫管理の混乱や顧客信頼の喪失など、間接的な損害も大きいと考えれているため、重要な課題の一つです。
物流倉庫のリスク③:荷崩れによる荷物のトラブル
物流倉庫では防犯面だけでなく、安全管理や品質管理の観点からも監視が重要です
- 荷物の転倒事故:高く積まれた商品の荷崩れは、人的被害だけでなく商品損傷の原因になります
- フォークリフト操作ミス:操作ミスによる商品接触や破損は、重大な経済的損失を招きます
- 作業手順の不遵守:定められた安全手順や作業フローを守らないことで生じる事故やトラブルも少なくありません
こうした物損トラブルは、単に商品価値の損失だけでなく、作業の中断や遅延、追加の人員投入など、運営コストの上昇にもつながってきます。
また、事故原因の特定や責任の所在確認が難しいケースも多く、再発防止対策が取りにくいという課題もあります。
AI防犯カメラで実現する次世代セキュリティ
AI技術の発展により、防犯カメラは単なる「記録装置」から「知能を持った監視システム」へと進化しています。
物流倉庫におけるAI防犯カメラの革新的な機能について詳しく見ていきましょう。
動体検知・人物検出による即時アラート
AIカメラの最大の特徴は、映像をリアルタイムで分析し、異常を自動検知できる点です
- 人物・車両の動きをAIが認識:通常の業務時間外に人や車両を検知した場合、即座にアラートを発します
- 不審行動のパターン認識:長時間の滞在、立ち入り禁止エリアへの侵入などを自動的に検知します
- スマートフォンへの通知連携:異常検知時には管理者のスマートフォンやPCへ即時にアラート通知が送られ、リモートでも状況確認が可能です
これにより、問題が大きくなる前に対応でき、被害を未然に防止できる可能性が高まります。
特に無人時間帯や人員が少ない夜間シフトでは、このリアルタイム検知機能が非常に重要な役割を果たします。
また、アラート感度や検知対象は細かくカスタマイズでき、誤検知を減らしながら本当に重要な異常だけを通知することも可能です。
録画だけでなく「見張る」カメラへ
AI搭載カメラは受動的な監視から能動的な監視・抑止へとその役割を拡大しています。
- 自動巡回機能:PTZ(パン・チルト・ズーム)カメラと組み合わせることで、プログラムされたルートを自動巡回し、広範囲を効率的に監視します
- 異常行動の自動検知:暴力行為、転倒、長時間滞在、通常とは異なる行動パターンを自動的に識別します
- 音声警告の発信:不審者を検知した際には、スピーカーを通じて自動的に警告メッセージを発することも可能です
これらの機能により、カメラは単に「録画する」だけでなく「映像から判断する・警告する」という監視の役割を大きく担うようになります。
この高度な監視による抑止効果は、犯罪を企てようとする人物に対して強力な心理的障壁となり、犯行をあきらめさせる効果が期待できます。
さらに、AIによる24時間365日の一貫した監視は、人間の集中力低下や主観的判断に左右されないという大きなメリットもあるため、安定した高品質なセキュリティレベルを維持することが可能になります。
導入事例|AIカメラで年間数百万円の盗難被害を防止
実際の物流現場でAI防犯カメラがどのように効果を発揮しているのか、具体的な導入事例を見ていきましょう。
大手物流企業の成功事例
大手物流企業では、商品の紛失件数が気になっていたことから、高価商品のピッキングエリアと出荷エリアに重点的にAIカメラを設置。
- 不審者の侵入・荷物の持ち出し・人の動線を24時間監視する体制を構築
- 内部犯行による商品紛失が大幅に減少し、盗難ゼロを3年継続中を達成
- 年間推定400万円以上の損失を防止できたと試算される
AIカメラを設置したピッキングエリアでは、商品の不自然な持ち出しパターンを検知したことで、通常の行動パターンから逸脱した行動により内部不正を効果的に防止できたといわれています。
また、AIカメラによる高性能さをアピールしたことにより、存在感も強力な抑止力となり、従業員のコンプライアンス意識向上にもつながったというポジティブな副次効果も得られています。
中小規模倉庫での導入効果
地方都市に拠点を構える中小物流倉庫では、夜間帯の無人時間帯や少人数体制による監視体制の甘さが課題となっていました。
そこで、AI搭載の防犯カメラを主要な出入口・搬出エリア・資材保管スペースに導入。
- 外部からの侵入・深夜の不審者検知・不審車両の滞留をAIで自動検出し、即時に管理者へ通知する体制を構築
- ・夜間の資材盗難や置き配資材の紛失がゼロとなり、年間100万円相当の損失を未然に防止
- 少人数でも「見逃さない監視体制」を構築できたことで、人手不足の現場でも高い安全性を維持
とくに資材保管エリアでは、通常と異なる動きをAIが自動で検知し、現場に行かずともスマホで確認できる体制が整備され、少人数運営でも安心できる環境が実現。
また、AI監視による緊張感が従業員の意識を高める効果もあり、ミスや不注意の削減にもつながっているようです。
AIカメラ導入時の注意点と選定ポイント
AI防犯カメラの導入効果は従来の防犯カメラと比較すると明らかに高機能・高性能ですが、この効果を最大化するためには適切な導入計画とシステム選定が不可欠です。
物流倉庫特有の環境を考慮した導入時の注意点を詳しく解説していきます。
導入時のポイント①:死角のないカメラ配置設計
効果的な監視システムを構築するには、カメラ配置の最適化が重要です
- 物陰ができやすい場所の特定:棚と棚の間、荷積みエリア、出入り口付近などは特に注意が必要です
- カメラタイプの選定:広角レンズカメラ、PTZ(パン・チルト・ズーム)カメラなど、場所に応じた最適なモデルを選びましょう
- 設置高さと角度の最適化:高すぎる位置に設置すると顔認識精度が落ち、低すぎると死角が増えるため、バランスが重要です
特に物流倉庫では、レイアウト変更や季節による在庫変動で死角が生じやすくなるため、定期的な配置の見直しも必要です。
導入時のポイント②:ネットワーク環境の整備と通信方式の選定
AI防犯カメラは、インターネットなどのネットワークに接続して映像を送る仕組みとなっているため、ネットが不安定だと映像が止まったり、通知が遅れたりする原因となってしまいます。
そのため、次のようなポイントに注意しましょう。
通信のスピードと安定性が大切
AIカメラは高画質の映像を扱うため、スマホやPCでのネット利用よりも多くの通信容量(帯域幅)が必要です。
ネットが混み合うと映像が途切れる可能性があるので、安定して速いインターネット回線を準備しましょう。
Wi-Fiが弱い場所では「有線接続」が安心
倉庫の中は金属の棚や大きな機械があるため、Wi-Fiの電波が届きにくいことがあります。
そんなときは、LANケーブルでつなぐ「PoE」というタイプを使うのがオススメです。
「PoEタイプ」の場合は、LANケーブル1本で電気と通信をまとめることができるため設置もシンプルです。
トラブルが起きても録画が止まらないようにする
ネットが一時的に使えなくなることも考えられるため、そのような場合に備えて、カメラ自体に録画機能がついているものや、別の通信回線(バックアップ回線)を用意しておくと安心です。
たとえば、メイン回線が有線LAN(光回線)であれば、バックアップとしてLTEルーターを設置しておくと、回線障害時に自動で切り替えて通信を継続することが可能です。
オフライン録画+クラウド同期機能を持つ製品の場合、「ネットに接続していないときはローカルに録画、 回復後にクラウドへ同期」という機能を標準搭載している製品もあるため、オンラインオフラインを想定した導入設計をすることが大切です。
ちょっと余裕のあるネット設計が安心
また、今の環境が十分問題ないとしても、今後カメラの台数が増えたり、より高画質の映像を扱ったりすると通信量が増えていきます。
そのため、最初から「ちょっと余裕のあるネット設計」にしておくことで、どのような環境に変化しても臨機応変に柔軟に対応することができます。
このように、AIカメラの性能を活かすためには、カメラ本体だけでなく通信の環境整備も非常に大切です。
特に倉庫のような広くて障害物の多い現場では、「電波が届くかどうか」「安定して使えるか」を事前にしっかり確認したうえで導入しましょう。
導入時のポイント③:プライバシーと内部コンプライアンスへの配慮
AI監視技術の導入は、従業員のプライバシーや職場環境に関する懸念を生じさせる可能性があるため、導入目的や運用方法などを明確にする必要があります。
- 目的の明確化と透明性確保:監視の目的と利用範囲を明確にし、従業員に対して透明性を確保することが重要です
- 運用ルールの策定:映像データへのアクセス権限や保存期間、利用目的の限定など、明確なルールを設けましょう
- 法的コンプライアンスの確保:個人情報保護法や労働関連法規に準拠した運用を心がけましょう
監視カメラの存在が「監視されている」という心理的圧迫を与え、職場の士気低下につながる懸念もあります。
そのため、セキュリティ向上が最終的には従業員自身の安全や働きやすさにつながることを丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。
一部の企業では、「セキュリティ委員会」などの形で従業員代表も含めた運用ルール策定を行い、透明性と納得感を高める取り組みを行っているところもあるようです。
まとめ
物流倉庫におけるセキュリティ対策は、AIの導入により、従来の防犯カメラでは対応できなかった「死角の排除」「リアルタイム監視」「異常検知」などを活用できることから、単なる「記録」から「予防」へと転換することや業務効率の向上など、総合的な価値を実現しつつあります。
そのため、AI防犯カメラは、今や単なる「防犯機器」の域を超え、物流の安全と品質管理に直結するスマート設備として、その重要性がますます高まっています。
AIカメラの導入で、御社の物流倉庫の防犯対策や安全面を根本から見直し、次世代の物流セキュリティスタンダードを構築していきましょう。
もし、AI搭載防犯カメラの選び方について不安に感じている方、さらに詳しい情報が知りたいという方は、お電話もしくはお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。
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