マンション管理では、従来型の防犯カメラでAIカメラの導入によって防犯と管理の両面を効率化できると期待されています。
しかし、十分な準備や理解がなければ、導入後に「思ったより効果が出ない」「住民とトラブルになる」といった事例も発生しています。
今回は、マンション管理においてAIカメラ導入を失敗しないための5つの重要なポイントを解説しますので、最後までご覧になり導入する際の参考にしてください。
目次
AIカメラの導入目的を明確にする
AIカメラの性能は年々向上していますが、漠然と導入しても期待する効果は得られず、機器や人件費といったコストばかりがかさむ恐れがあります。
つまり、最初の判断が後の成果を大きく左右するのです。
AIカメラを何のために導入するのか
AIカメラを導入するうえで、まず考えるべきは「この設備を通じて、何を実現したいのか?」という明確な目的です。
たとえば、「防犯を強化したい」「不法投棄を減らしたい」「駐輪場の利用実態を把握したい」など、現場の具体的な課題を言語化することが第一歩です。
もし目的が曖昧なまま導入してしまうと、必要以上の高機能機種を選んでしまい、結果的にオーバースペックになってしまうこともあります。
「最近導入しているマンションが増えているから」ではなく、具体的に何の課題を解決したいのかを明確にすることで、導入するカメラのスペックや機能が定まります。
防犯・管理の両立には機能整理が必要
AIカメラは、防犯だけでなく施設管理やトラブル検知にも活用できる多機能なツールですが、防犯と管理どちらにも使えるとはいえ、それぞれで求められる機能は大きく異なります。
しかし、多機能だからといって、あれもこれもやろうとすると、実際の運用が煩雑になったり、必要以上に高価な機種を選んでしまうリスクにもつながります。
そのため、「防犯強化が主目的」「管理支援も加味したい」など、優先順位を明確にしたうえで、必要な場所に必要な機能を絞り込んで選定することで、導入後の運用もスムーズになります。
担当者や管理会社と目的を共有
機能面に優れたAIカメラを設置したからといって、運用に関わる人たちが目的を共有していなければ機能を最大限活用することはできません。
たとえば、管理会社と管理組合の間で目的に食い違いがあると適切な機種選定ができず、結果的に高機能なカメラを導入しても効果が薄れてしまうケースがあります。
また、管理会社が通知機能の存在を把握していなかったり、担当者が録画の確認手順を知らないままだと、せっかくのAI機能も有効化できないものになってしまいます。
そのため、導入前には管理組合・理事・管理会社・防犯業者のあいだでも「何のために設置するのか」「何を見るためのカメラなのか」を共通認識として持つこと、そして運用方法などもしっかりと共有することが大切です。
現場環境に合わせた機器を選定する
AIカメラは現場の光量や気候、建物の構造に合わなければ本来の力を発揮できないため、設置環境によって性能が左右されるケースもあります。
そのため、下記のポイントをしっかりと確認してください。
日照・暗所・屋外など環境条件を確認する
マンションの共用部には、屋外・屋内・屋根下・半屋外といった多様な空間があります。
たとえばエントランスは雨風の影響が少なくても、駐輪場やゴミ置き場は常に外気にさらされています。
屋外にカメラを設置する場合は、IP66以上の防水・防塵性能があるカメラを選ぶ必要があります。
また、夜間照明が少ない場所では赤外線LED搭載モデルやナイトビジョン対応で暗視性能を備えた機種が求められます。
万が一、環境を誤ってしまうと、画質が悪くなったり機器が故障する原因になるため、設置場所の条件とカメラの耐性をしっかり照らし合わせることが重要です。
電源・配線・通信環境の整備を忘れない
AIカメラをスムーズに導入するためには、設置場所から電源や通信回線が確保できるかを事前に確認することが重要です。
特に共用廊下や屋外のゴミ置き場などでは、コンセントがない・LAN配線が届かないといった問題が頻発します。
もし、電源が取れない場所では、モバイルバッテリー型やソーラーパネル一体型の赤外線カメラも選択肢に含まれ、通信環境がない場合はLTE回線内蔵タイプを選びましょう。
たた、有線であればPoE(LANケーブル1本で電源と通信を供給)を利用できるかどうかの確認も必要しておきましょう。
万が一、「機器が届いてから設置できない」という事態を避けるためにも、現地調査で配線やネットワーク環境まで把握することが、失敗しない選定の前提条件となります。
音声・動体検知など必要機能を見極める
AIカメラは「映すだけ」でなく、音や動きに反応して記録・通知を行う多機能なモデルも増えています。
たとえば、駐車場やゴミ置き場では騒音トラブルを記録できる音声機能が役立つケースがあります。
また、動体検知機能はAIが搭載したことにより、動物と人を識別できるようになり、今までの誤検知を極めて少なくできるようになりました。
せっかく、高性能な機能だったとしても、誤検知が多くなってしまうと管理業務の手間が増え、本来の目的が損なわれる恐れも考えられます。
他にも、エントランスでのトラブル記録には音声録音機能が役立つ場面もあります。
ただし、すべての機能を盛り込むとコストも設定の手間も増え、運用が煩雑化するおそれがあるので、「何を検知・記録したいか」をもとに、予算と本当に必要な機能を計画的に検討していくことが大切です。
設置場所ごとの「死角」にも注意する
AIカメラを導入しても、肝心なトラブル現場が死角になっていたというケースは少なくありません。
特にエレベーター前や駐車場の柱の裏など、見逃しやすいエリアには注意が必要なため、事前に現地調査を行い、複数台の連携でカバーする配置が理想的といえます。
できれば、プロの業者の方や防犯設備士の資格を持った方に現地調査をしっかりしてもらい、死角が最小限になる配置をシミュレーションして検討しましょう。
カメラの性能が高いとしても、設置位置がずれていれば防犯力は半減してしまうので、死角をつくらないレイアウトこそが、AIカメラの本来の効果を引き出す設計のポイントです。
実際の映像サンプルで性能を確認する
カタログスペックの説明文だけで判断せず、実際に導入したい環境に近い条件で撮影された映像を確認しておくことが重要です。
特にAI解析による誤検知がないか、人物の顔や服装がはっきり映るかどうかなど、リアルな映像でのチェックをすることでトラブル防止に役立ちます。
可能であれば、同じモデルのカメラをレンタルしてテスト運用し、夜間や逆光時の映り方・検知反応をチェックすると長期的に安定した運用に繋がります。
プライバシー問題への対応を忘れない
AIカメラの導入が進むなかで、特にマンションのような共同住宅では「監視されている」という印象を与えないよう注意が必要です。
映像に映り込むのは単なる建物の様子ではなく、人々の日常であることを忘れてはいけません。
個人の居住空間を映さない設置計画を立てる
カメラの設置角度によっては、住戸の玄関やベランダ、室内が映り込む可能性があります。
こうした映像が記録されると監視されていると感じた住民が不快感を覚えるだけでなく、プライバシーの侵害として問題になる恐れが考えられます。
もし、死角を補いたいという意図があったとしても、設置位置には細心の注意が必要です。
映像の利用目的と保存期間を明確にする
記録された映像データがどのような目的で、どの程度の期間保存されるかについては、事前に住民に説明する必要があります。
たとえば、防犯目的の利用に限る、保存期間は最大でも30日とする、といったガイドラインを明示することで、住民の理解を得やすくなります。
また、データの保管先や保管方法なども明確することで、住民の不安や疑問点などをクリアにでき、導入後も安定した運用が実現できます。
住民説明会や掲示で透明性を確保する
導入前には、住民に対する説明会や掲示物の配布を行い、導入の背景や必要性を丁寧に伝えることが重要です。
カメラが何を映すのか、映像は誰が見るのかといった基本的な疑問に誠実に答えることがトラブルを未然に防ぎます。
意見交換の場を設けることで、協力的な雰囲気も生まれやすくなります。
導入後の運用体制も事前に整える
AIカメラの導入は「設置して終わり」ではありません。むしろ、設置後の運用が導入の成功を左右します。
計画的な運用体制の整備が、住民にとっても管理者にとっても安心につながります。
異常検知後の対応手順を定めておく
AIカメラは異常を検知するだけでなく、その後の対応フローが整っていることではじめて効果を発揮します。
たとえば、不審者を検出した場合に誰に通知が行くようになっていて、だれが通報するのか、エラー発生時にどこへ連絡するのかなどのルールを事前に決めておくことで、事件発生時でも素早く適切な対処ができるようになります。
トラブルが起きた際に「誰も対応しなかった」という事態を避けるためにも、だれが見てもわかるような対応マニュアルの整備が重要です。
また、定期的に防犯訓練により実践的な体験や学びの機会を作ることで、トラブル発生時でも焦らず的確な行動をとることができるようになります。
モニタリングと確認業務の分担を決める
AIカメラの映像を常時監視するのか、それとも異常時にのみ確認するのかによって、運用の手間は大きく異なります。
また、管理人が対応するのか、委託先の警備会社が行うのかをはっきりさせておくことで、別のトラブルを引き起こさなくなります。
他にも、像の確認頻度や保存データのチェック項目も取り決めておくと安心です。
映像の取扱範囲や閲覧権限を明確にする
録画された映像には住民の行動が含まれるため、閲覧できる人や目的を明確に制限する必要があります。
管理会社の担当者全員が自由にアクセスできる状態では、プライバシー保護の観点から問題が生じるのです。
誰が、どの条件下で映像を確認できるのかを文書化し、運用ルールとして住民にも周知しておくとトラブルを回避できます。
定期的な点検とフィードバック体制の構築する
カメラを導入後に運用が開始された後も、設定の見直しや機器の点検を継続的に行うことが長期的に安定した運用の鍵となってきます。
たとえば、誤検知や未検知が多発している場合には、AIの設定条件やカメラの設置位置を調整することで精度を高めることも可能です。
AIの検知機能は極めて誤検知が少ないですが、天候や光の変化などの環境変化によって誤検知を引き起こしてしまう可能性があるため、もし異常を検知して通知が送られてきてもリアルタイムの映像や直後の映像を確認する体制を整えておくことで、より効率的な監視体制となります。
また、住民から定期的なアンケート調査や意見交換などを行い、運用改善に役立てるフィードバック体制を整えておくことで、導入後の満足度が大きく変わってきますので、しっかりと実施しましょう。
保守・セキュリティ対策を忘れずに
高性能なAIカメラであっても、適切な保守とセキュリティ対策がなければ、その性能を持続的に発揮することはできません。
長期的な安定した運用を見据えた管理が、安全性の担保にもつながります。
定期点検と清掃をルーティン化
カメラは常に稼働しているため、レンズの汚れや本体の劣化が映像の質に直結したり、不具合・故障の原因となります。
そのため、定期的な清掃や動作確認を行うことで異常を早期発見でき、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
また、落雷や台風といった自然災害後は、何が起こったのかわかりませんし、設置状況の確認も含め必ず点検することを心がけましょう。
ファームウェアの更新
AIカメラの性能向上やセキュリティ強化のため、メーカーから提供されるソフトウェアのアップデートは定期的に確認することが大切です。
更新を放置すると、アップデート前のソフトウェアに脆弱性が出てしまい、そこから侵入され不正アクセスのリスクが高まってしまいます。
そのため、管理会社または設置業者と連携し、更新スケジュールを共有したり、更新状況をなど最新情報を常にチェックしておくことが理想です。
サイバー攻撃への対策も必須
インターネットに接続されるAIカメラは、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃のリスクを常に抱えています。
IDとパスワードの管理を強化をして、サイバー攻撃の対策を行いましょう。
故障時の対応ルールと保険の整備
AIカメラは精密機器である以上、耐久性があるように設計されていますが、故障や不具合はゼロではありません。
雷・浸水・破損・経年劣化など、突発的なトラブルに備えて、あらかじめ管理組合や管理会社との間で「誰が、いつ、どう対応するのか」などの対応手順をマニュアル化し、住民や管理人がすぐに動けるように情報共有しておくことが大切です。
また、修理費用が発生する可能性もあるため長期保証の加入を検討することで、金銭的なリスクを最小限に抑えられます。
メーカー保証や保守の内容を把握し、無償修理の条件・代替機の提供有無・交換までの時間なども確認しておきましょう。
カメラは長期運用が前提だからこそ、「壊れたとき」の準備こそが安定稼働のカギとなってきます。
まとめ
マンション管理における最新のAIカメラを導入することは、防犯や監視においてとても優れた機能を備えているため、従来の防犯カメラから買い替えることが推奨されています。
しかし、その効果を最大限に引き出すには、「導入目的の明確化」「設置環境の把握」「プライバシーへの配慮」「運用体制の整備」「保守・セキュリティ対策」の5つの視点が欠かせません。
マンションは多様な住民が暮らす環境なので、技術的な優位性だけでなく、住民との信頼や合意形成のプロセスもとても重要です。
導入する前に住民説明や運用ルールの整備を通じて、誰もが安心して暮らせる環境づくりを目指すことこそがAIカメラ導入の最大の目的です。
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