製造業などの工場では、電気設備や高温機器の加熱トラブルによる火災リスクが常につきまとっているため、従来の監視カメラよりもAIが搭載されたサーマルカメラがおすすめです。
特に夜間や無人時間帯では、異常に気づくのが遅れてしまうと、重大な事故へとつながるケースも少なくありません。
今回は、AI搭載サーマルカメラによって工場内のリスク監視を自動化し、安全性を高める最新ソリューションについて解説しますので、最後までご覧になり導入の参考にして下さい。
目次
工場に潜む火災リスクと現場の課題
工場は多くの設備・配線・可燃物が集中している環境であり、火災のリスクが常に隣り合わせであることを理解しておきましょう。
2022年の総務省消防庁のデータによると、工場・作業場における火災原因の上位には「電気的要因による火災」が含まれており、その中でも「配線器具の過熱」や「過電流による発火」が多く報告されています。
工場における火災に繋がる原因について紹介していきます。
工場の火災リスク①:電気設備の劣化・ショート
電気設備の場合、配電盤や制御盤、機械内部の配線劣化やトラッキング現象が火元となることが多く、目視では気づきにくいため予防が難しいといわれています。
さらに、過負荷や漏電が蓄積すると発火につながるケースもあり、早期の異常発熱検知が不可欠です。
工場の火災リスク②:機械の過熱・摩耗
モーター・コンプレッサー・ベアリングなど可動部分の異常摩擦や冷却不良が原因で、部品が高温化し、その熱が周囲の可燃物へ引火することがあります。
特に24時間稼働するラインでは、温度上昇に気づくタイミングが遅れると一気に被害が拡大します。
工場の火災リスク③:粉塵・油分の蓄積
製造業では微細な粉塵・金属粉・油煙が空気中や設備上に蓄積し、それが静電気や火花を引き金に爆発的燃焼を起こすケースも報告されています。
こうした物質は発火点が非常に低いため、温度監視と環境管理が重要となってきます。
工場の火災リスク④:ヒューマンエラーによる引火
可燃性のある溶剤・ガス・スプレーなどを不適切に保管・使用したり、熱源の近くに置くことで引火事故につながることがあります。
このような人的ミスは完全に防ぐのが難しいため、常時監視と異常通知ができるAIカメラの導入が効果的です。
従来の監視カメラでは見逃す異常をカバー
可視カメラでは”熱”は見えない
工場では一般的に防犯目的で可視カメラが設置されていますが、これらは「光で見える範囲の映像」を記録することに特化しており、侵入者の動きや設備の外観異常には強い一方、温度変化や熱の蓄積といった「見えない異常」には対応できません。
たとえば、配線の発熱やモーター内部の温度上昇などは、煙や火が出るまで映像に現れることがないため、火災を認識したときには既に手遅れというケースも少なくありません。
特に制御盤内や機械の裏側など、目視や可視カメラの視野からは捉えられないため、結果的に「気づいたときには火災が始まっていた」という事態に繋がりかねません。
従来の可視カメラでは異常の“結果”を記録するには適していても、前兆となる兆しを捉えるには限界があるという根本的な構造上の弱点があります。
サーマル×AIだからこそ実現できる予防型監視
これに対してサーマルカメラは、赤外線によって物体の表面温度をリアルタイムで可視化することができ、設備の異常加熱や負荷の偏りなど、「熱の異常」や「火災の兆候」を事前に捉えることが可能です。
しかも、サーマルの場合は熱を色で分けているため、細かい温度状態を一目でわかるようなっており、明らかに異常な状態を目視でも瞬時に判断することもできる仕組みになっています。
また、AIが搭載されていることで、「通常より高温状態が続いている」「異常な部位が時間経過とともに拡大している」といった傾向を自動で認識し、アラートを発信することもできます。
サーマルとAIを組み合わせることにより、人の目や定期点検だけでは見逃されがちな異常を常時監視し、トラブルを未然に防ぐ“予防型の監視体制”が実現します。
火災が起きてからの対応ではなく、「起きる前に手を打つ」ことができるのはサーマル×AI監視の最大の強みです。
AIサーマルカメラの具体的な検知・機能について
AIサーマルカメラは、温度の「異常」を捉える力と、AIによる自動分析・通知機能を組み合わせた高度な監視機器です。
以下は、工場や倉庫で活用される代表的な検知や機能について紹介します。
AIの検知・機能①:異常温度検知
AIサーマルカメラでは、温度の上限・下限をあらかじめ設定することで、対象物の温度が基準値を超えた場合に自動でアラートを出すことが可能です。
たとえば、「 制御盤が常温以上(60℃など)に上がった場合に警告する」といった設定や「モーターや電源装置の温度異常をリアルタイム通知」といった事前予防に役立つ監視を構築することができます。
AIの検知・機能②:エリア内の温度分布分析
高性能なAIモデルでは、カメラ映像の特定エリアをゾーン設定し、そのエリア内の温度変化を常時モニタリングすることができます。
そのため、特定機械の「右半分だけ異常に熱い」などの局所的な温度偏差も捉えることができ、機械劣化の兆候や異常負荷の発見に有効です。
AIの検知・機能③:発熱パターンの自動学習と異常検出
AIは日々の運転データを学習し、「通常の温度変化」と「異常な温度挙動」を区別するパターン認識機能を持ちます。
たとえば、「 いつもは30℃前後なのに、今日は45℃以上をキープしている」という状況や「発熱の速度や範囲がいつもと違う」といった、通常時と微妙な違いに反応し、蓄積されたデータとの乖離を検知して警告してくれます。
AIの検知・機能④:アラート通知と外部システム連携
AIの特徴の一つですが、リアルタイムの映像を分析し、その結果から検知された異常を即座にアラートとして管理者にメールやアプリへ通知することができます。
また、これから制御管理システムの連携が可能なソフトウェアが開発された場合、AIカメラから制御盤へ信号を送り、警報装置や自動停止機能と連動させることで、重大事故の回避に繋げられることも可能となります。
そのため、現場のシステムに応じた多様な通知や機能設定が構築できるようになります。
NSKの「IP-P8104TP」が工場監視に適している理由
工場において、導入もしくは買い替える場合は、NSKの「IP-P8104TP」がおすすめな理由について紹介していきます。
火災の兆候を表面温度の数値化による異常モニタリング
「IP-P8104TP」は、赤外線サーマルセンサーを搭載しており、対象エリア内の急激な温度上昇や対象物から放射される赤外線(熱)を感知し、表面温度を数値化して異常温度をリアルタイムでモニタリングすることができます。
そのため、配電盤やモーター、制御盤などの設備が異常加熱する前に警告を発したり、目視では確認しづらい設備内部や背面の温度変化も把握でき、火災のリスクを未然に防ぐことが可能となります。
広範囲をカバーするデュアルレンズモデル
「IP-P8104TP」は、サーマルカメラと可視カメラを1台に搭載しており、熱画像と通常の映像を同時に取得できます。
特に、発熱箇所の特定と現場のリアルタイムによる状況確認を1台で完結できるのが強みです。
従来の単眼カメラでは、温度異常の箇所とその背景環境(現場の作業員の位置、周囲の装置状況など)を同時に把握することができず、後からの分析や対応が遅れがちとなっています。
しかし、デュアルレンズモデルは、記録された映像の中に熱画像と可視映像を重ね合わせて表示できるため、点検・報告の効率化にもつながります。
高温検知対応&過酷な環境でも稼働
「IP-P8104TP」は最大550℃までの温度検知が可能で、鋳造・溶接・焼成など高温作業を伴う工場においても正確に温度変化を記録することができます。
また、IP67の防水防塵性能を備えており、油煙・水蒸気・粉塵が舞う過酷な現場環境でも安定して稼働します。
設置後のトラブルリスクが低く、メンテナンス頻度も抑えられるのが特徴です。
AI映像解析と遠隔監視に対応
AIによって異常温度の自動検知、対象分類、警報連携が可能なだけでなく、クラウドベースの映像保存や遠隔モニタリングにも対応しています。
これにより、管理者は現場に常駐せずとも、PCやスマートフォンから工場の安全状態をリアルタイムで確認することができます。
複数拠点に工場を保有する企業でも、全拠点のカメラを一元管理できる環境を構築でき、経営・保全部門にとっても大きなメリットとなります。
AI搭載サーマルカメラ導入時のポイントと注意点
AI搭載サーマルカメラを導入時に注意する点や効果を最大限発揮させるためのポイントについて紹介していきます。
目的の明確化と設置エリアの選定が重要
サーマルカメラは温度変化を捉えるため、火災の予兆監視や設備保全、人的リスクの検知など、「何を見たいか」「何を検知したいか」によって設置場所が大きく変わります。
たとえば、配電盤・制御盤・モーター周辺など、熱を発する設備周辺への設置が有効です。
事前に現場のリスクを洗い出し、重点的に監視すべきエリアを選定しましょう。
カメラ性能の把握と適合性の確認
サーマルカメラには、解像度、温度感知の範囲、通知のしきい値など、製品によってスペックが異なります。
AIが搭載されているかどうかも確認ポイントです。たとえば「IP-P8104TP」のように、温度の数値監視や行動検知(喫煙・通話)まで対応する機種なら、安全管理の自動化に大きく貢献します。
導入前に、カタログスペックだけでなく、実際の映像サンプルで比較検討するのがおすすめです。
通信・電源インフラの事前整備
AIカメラはネットワーク接続が前提となるため、安定した通信環境が必要です。
工場や倉庫のような広い空間では、Wi-Fiの死角が出やすく、有線LANやPoEカメラの導入が推奨されます。
また、万が一の通信断にも備えて、オフライン録画機能やSDカード搭載タイプの検討も必要です。
設置場所まで電源が届くかどうかも含め、事前にインフラ整備計画を立てておきましょう。
異常検知後のアラート体制を構築する
AIが異常を検知しても、その後の対応体制が整っていなければ効果は半減します。
通知先の設定(メール・アプリ・管理システム)や、警報ブザー、点灯装置との連動など、異常発生時の運用ルールを明確にしておくことが重要です。
可能であれば、録画映像が即時確認できる遠隔管理システムの導入も検討してください。
定期メンテナンスとサイバーセキュリティ対策の考慮
レンズの曇り、誤作動、ソフトウェアのアップデート不足といった問題が蓄積すれば、せっかくの高機能カメラも性能を発揮できません。
定期点検スケジュールの整備と、クラウド接続型システムにおけるセキュリティ対策(ID管理・ファームウェア更新)も必須です。
情報漏洩や遠隔操作といったリスクにも備え、信頼できる製品を選ぶと同時に運用ポリシーを社内で策定しておきましょう。
設置後の運用ルールを定めておく
サーマルカメラを導入するだけでは、トラブル回避は不完全です。
発報時のフローや担当者の割り当て、定期点検・記録保存ルールなどを事前に整備しておくことで、初動対応のミスや連携漏れを防ぐことができます。
特に夜間や休日の異常検知に備え、遠隔通知の設定や、緊急時の対応マニュアルも併せて準備することが重要です。
まとめ
工場にAI搭載のサーマルカメラを活用することで、異常の兆候を即座に捉え、対応スピードを大幅に高めることが可能となります。
なかでも、「IP-P8104TP」は高温対応・屋内外対応・AI検知機能を備えたモデルとして、工場現場に最適な選択肢の一つです。
既存の防犯カメラでは補えない”熱の異常”を補完し、重大事故の予防に貢献してくれるため、安全対策の一環として、サーマル×AIカメラの導入をぜひご検討ください。
もし、AIカメラの選び方について不安に感じている方、詳しい情報が知りたいという方は、お電話もしくはお問合せフォームよりお気軽にご相談ください。
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株式会社NSKは監視カメラ・防犯カメラ・セキュリティ機器のメーカーです。
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